この受賞曲は、宮沢賢治の作品「やまなし 12月」のイメージ音楽です。
この作品は、私が小学校の国語の教科書で始めて出会ったもので、大人になってからもずっと心の奥に大切に温めていた世界です。この作品の根底に流れる美しい世界を、いつか音楽にしたいとずっと思っていました。
実は、「やまなし」には「12月」の前に「5月」があります。
「5月」の方を先に制作し、すぐに「12月」に取り掛かったのですが、なかなか進まずとても苦労しました。
そのため、苦労した「12月」の方を、コンテストに応募することにしました。
凛とはりつめた空気の冷たさ、月光に照らされて静かに揺らめくどこまでも深くて透明な青色の水の世界、その静かな川の水底にたたずむ蟹の親子の心温まる会話、あまい香りがこちらにまで漂ってきそうなやまなし。
私の心のプリズムを通して見えるこのような世界を、精一杯音で表現してみました。
音楽で一般に使用される「拍」という概念を意識しつつ、もう一方で自然の中に息づいている「リズム」を自分なりの感覚で構成していきました。
どのタイミングに、どんな音色で、どのように表現するか。
今回の曲づくりの大きなテーマでした。